筆者は、何故か分からないが、監督Sam Raimeサム・レイミの『スパイダーマン』三部作(2002年–2007年)で、俳優Tobey Maguireトービー・マグワイアーによって体現された「スパイダー・マン」というキャラが好きではない。否、嫌いである。なぜなら、いつも正義が自分の側にあるという傲岸さが鼻に衝くからである。それは、USAが民主主義の旗持ちであることから、いつも正義の側に立てるのと同様であり、さらに別に日本史の文脈で言えば、官軍が、錦の御旗を掲げることで、その政治的正当性をいつも主張できるのと同様である。敢えて言えば、ピーターのメントール、即ち、精神的庇護者、アンクル・ベンがピーターに諭す格言「With great power comes great responsibility.(大いなるパワーには、大いなる責任が伴う)」もまた、USAの政治的道徳感にむしろ当てはまる。スーパー・パワー、超大国には、世界の「警察」としての責任があるとも読み替えることができるのである。因みに、この格言は、古代ギリシャ時代から似た格言があると言われるものであるが、遅くとも、フランスの啓蒙思想家ヴォルテールが成文化した格言である。
確かに、いじめられっ子の高校生のティーン・エイジャーが、蜘蛛に刺されたことにより超能力を持つようになり、次第に自分に対して自信を持っていくようになる、いわば、教養小説のプロセスは、それは、それなりに面白いのではあるが、悪に対して戦うことが自明の理であり、自己の持つ超能力を悪事に使おうとする誘惑には駆られることのない、そのような一元的な人間が日の当たる街道ばかりを突っ走る「直情さ」に、筆者は、何か胡散臭さと物足りなさを感じるのである。
それが、Marc Webbマーク・ウェブ監督の本作『アメイジング・スパイダーマン』(2012年作)で、Andrew Garfieldアンドリュー・ガーフィールが演ずるところPeter Parkerは、「正義の味方」の臭さが大分消えていて、好感が持てる。ここでは、彼は、頭脳明晰な、オタク的なアウトサイダーとして描かれており、「リブート」前の厭らしさもなくなって、意外とすんなりとガールフレンドGwen Stacyもできてしまうのである。(因みに、コミック世界では、Peterが最初に付き合ったのは、Betty Brandで、それに横恋慕して二人目のガールフレンドとなるのが、Liz Allanである。Gwenは、Peterの三人目のガールフレンドとなるが、映画『スパイダーマン』での、Peterの意中の人、MJことMary Janeは、Gwenの恋敵的存在である。)
最後に、Peterを演じる若い俳優ガーフィールドの脇を固める、二人の名優について述べておこう。まず、アンクル・ベンを演じるMartin Sheenは、知らない人がいないほど有名な俳優で、『地獄の黙示録』で主人公ウィラード大尉を1997年に演じている人物である。一方、メイ叔母さんを演じるところのSally Fieldである。彼女は、1979年の『Norma Raeのーマ・レイ』、1984年の『Places in the Heartプレイス・イン・ザ・ハート』で二度もアカデミー主演女優賞を受賞し、さらに、ゴールデン・グローブ賞でも二回、エミー賞では三回受賞した経験がある名女優である。
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