時代は1944年8月のことであり、場所は、第二次世界大戦中のフランスである。B.ランカスターが何か「異星人」のような感じで、周りのフランス人から浮き上がっている雰囲気が否めないのではあるが、脇を固めるフランスの俳優陣の演技で、このB.ランカスターが醸しだす「違和感」は、映画の中盤までは何とか抑え込まれていると言えよう。このような戦争アクション映画作品に、あのフランスの性格女性俳優J.モローが登場していることの意外さもさることながら、とりわけ、レジスタンスの一員ではないのであるが、サボタージュ工作に加担し、そのサボタージュの犯人と見破られて、駅構内で即決裁判で銃殺されるフランス国鉄機関士“Papa“ Boule(ブール「父つぁん」)を演じた、フランス映画の怪優の一人Michel Simonの存在が本作ではとりわけ印象的である。
このように、B.ランカスターの思惑もありながらも、本作にはフランスの映画資本も投入されており、それ故に、本作は、英語版とフランス語版が存在する。そして、その制作行為は、フランス国有鉄道SNCFの鉄道員達が、第二次世界大戦中に対独レジスタンスで払った犠牲へのオマージュでもあったことであろう。鉄道網再編によるSNCFフランス国鉄の設立は正に1938年であり、それは、第二次世界大戦勃発の前年である。
René Clément監督の作品『禁じられた遊び』(1952年作)で描かれたように、1940年5月にはナチス・ドイツがフランスに侵攻し、北部フランスがナチス・ドイツの占領下に入ると、南部フランスにはナチス・ドイツの傀儡政権と言ってもいいヴィシー政権が出来上がる。一方、イギリスに亡命したドゴール将軍の下、「自由フランス政府」が存在しており、その命を受けて、占領下のフランスには対独レジスタンスが『影の軍隊』(Jean-Pierre Melville監督の1969年作品の題名)として存在し続けたのであった。B.ランカスター演じるところのラビッシュもまた、この対独レジスタンスの一員であったのである。
しかし、このナチス・ドイツによるフランス占領も、1944年6月の、所謂「ノルマンディー上陸作戦」以降、ヨーロッパに西部戦線が出来ると、同年の8月中旬にはパリ市民の蜂起が起こり、同月下旬にパリが「解放」されることになる。作中のドイツ国防軍将校フォン・ヴァルトハイム大佐は、このパリへ連合軍が迫る中、フランス国民の「魂」たるところの絵画芸術作品をドイツ本国に略奪・移送しようとしたのである。しかし、このストーリーの背後には実は、北フランス占領中における体系的な、ナチスによる芸術作品略奪の史実があるのである。
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