本作の制作が1992年で、日本での上映も同じ年の夏である。ということは、日本のバブル経済がはじける直前のことである。そして、バブル経済とは、日本経済が、「ものづくり」の経済ではなく、土地投機に血道をあげていたことを意味する。それは、価値の新たな創造ではなく、金の土地への投機が、より金の額を増やすかもしれないというところで展開する経済であり、同時に、経済成長とは関係のないところで回る「金融資本」の論理の貫徹を意味していた。正に、カール・マルクスが資本主義の発展に関して予言していた通りである。本作でのテーマもまた、19世紀末のUSAにおける、土地所有への熱い願望であり、その意味で、本作は、日本のバブル経済での土地投機への熱狂と軌を一にするものである。この点、本作の日本での初上映が、1992年夏であったことに、何かの符牒を筆者は感ずるものである。2023年の現在から見て、ほぼ30年前のことであり、ある種の感慨の念を禁じ得ない。
さて、土地の問題ということであると、本作のストーリーにおいては、映画の最初のアイルランドの部分とその後のUSAの部分でも通底している点に気を付けたい。
映画でも描かれた通り、19世紀後半のアイルランドでは、「Land War土地戦争」が行なわれていた。Tom Cruiseが演じるJosephは、アイルランド人の貧農の息子であり、この当時、基本的にはアイルランド人は「小作人」であるということである。一方、Nicole Kidmanが演じるShannonは、イギリス人の大土地所有者Christieの娘である。Christieの館が焼かれる焼き討ち事件は、実は、このLand Warと呼ばれた、19世紀70年代以降の、土地制度改革運動、つまり、アイルランド人の小作人の地位の向上を目指す運動の中で起こったものである。
この土地問題が、今度はUSAでのストーリー展開になると、プロットとして、「Oklahoma Land Run」が取り上げられる。「Land Run」とは、土地取り競争であり、予め区分けしてある土地に向けて、スタートラインを決めて、土地を所有したい人間達、つまり白人の入植者達に「ラン」をさせることである。Oklahoma州で行なわれた、この土地争奪競争は、記録によると、五回あった。1889年のものがその最初で、その後、1891年から三年間連続し、一年空けて、1895年のものが五回目で最後であった。この五回の内、四回目の、1893年9月16日のLand Runが最大のものであり、1889年の参加者人数の約4倍の入植者達がこれに参加し、約33.000平方kmが土地所有の願望の対象にされたと言う。本作でも、この1893年9月16日のLand Runが、そのクライマックスに使われており、JosephもShannonも、その土地を求めての土地争奪戦に参加していた人間達の一員だったという訳である。
そして、このRunに提供された土地とは、では、誰も所有していなかった土地であったかというと、このオクラホマ「準」州の歴史をよく見ると、基本的には、アメリカ先住民が北アメリカ大陸各地から強制移住させられてやってきた居留地Reservat、すなわち、インディアンに「リザーブされた」土地であったということである。その土地が、白人入植者達に提供されたのが、実は、この「Oklahoma Land Run」であったのである。つまり、白人によるアメリカ先住民の収奪である。
この点をオクラホマ出身の監督R.ハワードが、自ら原案を考えだし、製作もしている中、Land Runスタート直前にアメリカ先住民を一秒のみ見せることで「スルー」しているのは、このポップコーン映画のハッピーエンドに相応しい軽薄さである。
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