2024年11月24日日曜日

フューリー(USA、英国、2014年作)監督:デイヴィッド・エアー

 時は、1945年4月である。と言うことは、ナチス・ドイツと西側連合軍との間に無条件降伏条約が結ばれる同年5月8日(ソ連邦軍とは5月9日)までにもう一ヶ月もない時期のことであろう。場所は、主人公達がアメリカ軍戦車部隊所属であるから、当然、西部戦線で、もう既にドイツ帝国内に侵攻しているはずであるが、それがどこら辺なのかははっきりとは分からない。この主人公達の戦車乗員チームを率いるのがBrad Pittが演じるM4シャーマン戦車車長である。

 さて、アメリカ軍の「Sergeant」という軍曹・曹長階級には、Sergeant majorまではSergeantという階級名それ自体を入れると6階級あり、下から仮に「Sergeant三等軍曹」、「Staff Sergeant二等軍曹」、「Sergeant First Class一等軍曹」と訳すと、その上が、「曹長」であろう。であるから、「Master Sergeant」を「二等曹長」とすれば、その上の「First Sergeant」は、丁度「一等曹長」で訳が上手く当てはまる。その上がSergeant Majorなので、これを「上級曹長」と訳せば、それ以上は、「最先任上級曹長」として、アメリカ陸軍内の下士官としての最高位に当たる階級「Sergeant Major of the Army」に上手く当てられる。Brad Pittが演じるCollierは、ウィキペディアの英語版によると、「一等曹長」であると書かれてあるが、ドイツ語版と写真で確認すると、「Staff Sergeant二等軍曹」である。筆者には、この階級は歴戦の「勇士」にしては階級が低すぎるような感じがする。

 映画内でのCollier本人の言によると、彼は、既にナチス・ドイツのRommel将軍が率いるアフリカ戦車軍団と戦うことになるアフリカ戦線以来、つまり、1943年以来、戦争に従軍しているという「強者(つわもの)」である。恐らく一兵卒からコツコツと積み上げて「二等軍曹」まで昇りつめた人間なのであろう。戦争の「現実」を嫌と言う程、体験している人物であり、その綽名「Wardaddy」が示す通り、戦禍の中を生き延びる生活の知恵を身に付けた人間なのである。その彼の下に、階級はPrivate First Class(「上等兵」相当)ではあるが、軍行政のタイピストとして軍役に就いていたNormanが前線に送られてくる。故に、彼には戦争が何であるのかが理解できておらず、この「父ちゃん」たるCollierに「新兵」Normanは、戦場での「作法」を厳しく「躾られる」ことになる。この意味では、本作は、新兵が戦場にやってきて、戦場の場数を踏むことで、次第に「成長」していくという、言わば、戦場版の「教養小説Bildungsromanビルドゥングス・ロマーン」の、典型的例と言ってよい。そういう点から考えれば、Normanとドイツ人娘Emmaとの睦言も、彼が「一人前の男」になるためには必要な「通過儀礼」としての性格を帯びる。しかも、その後朝(きぬぎぬ)の朝、Emmaには悲惨な運命が待ち受けているのではあったが...

0 件のコメント:

コメントを投稿

泣け!日本国民 最後の戦斗機(日本、1956年作)監督:野口 博志

 まず画像に、「この一篇を雲の彼方に散った若人のために捧ぐ」と流れる。  すると、早速、当時の実写の場面が写し出され、恐らくマリアナ沖海戦か、沖縄戦における神風特攻作戦の場面が一部特撮を混ぜて見せられる。(特撮:日活特殊技術部;やはり、戦前からの東宝・特撮部、円谷英二班のものには...