第二作目が、例外的に、第一作目より上手くでき上っているケースがある。例えば、『ターミネーター』シリーズであろう。この幸福なケースは、本シリーズにも当てはまる。何故か?
D. コルスタッドは、1974年生まれのアメリカ人で、大学では経営学を勉学したが、卒業後、思うところがあり、映画脚本家になろうとして、彼が24歳の時、カルフォルニア州に移住する。それ以来約15年ほど努力を続けて、2012年に初めてアクション映画の脚本を採用してもらう。その二年後、K.リーヴスの提案により、自分が持ち込んだ、ある脚本の名称を「John Wick」と変えることになるが、この名前は、K.コルスタッドの母方の祖父の名前であると言う。こうして、前作と本作の脚本も担当することになったという経緯がある。因みに、2021年制作の映画で、意外にヒットした作品『Mr.ノーバディ』の脚本を書いているのも、このD.コルスタッドである。
それでは、「ジョン・ウィック・ワールド」とはどんな世界であろうか。まず、第一作目から分かっていたことは、裏社会では、殺し屋達が多数存在し、犯罪組織に雇われて殺しを執行するのであるが、その殺し屋達の稼業をサポートする「コンティネンタル・ホテル」という組織があることである。
この「コンティネンタル・ホテル」は、裏世界ではそれなりの権力を持っており、ホテル内では殺しは行なってはならないとする「掟」を殺し屋達に課すことが出来るのである。そして、本作により、「コンティネンタル・ホテル」には、ニューヨーク店だけではなく、ローマ本店も存在し、恐らく、世界的なチェーンを組んでいる組織であることが分かる。
一方、「ジョン・ウィック・ワールド」には、ニューヨーク市マンハッタン区南部にあるBowery(バウワリー)地区のホームレス達を組織する犯罪・情報地下組織が存在し、そのKingの地位に収まっているのが、バウワリ―・キングである。(Bowery King;『マトリックス』で顔が売れた役者ローレンス・フッシュバーンが演ずる。)18世紀前半にイギリスで上演された『乞食のオペラ』のストーリーを思い出させるセッティングである。あそこでも、ロンドンの乞食達が「乞食王」ピーチャム氏に統率されている。
これに対し、以上の勢力に隠然たる力を振るっているのが、12の席あるというHigh Tableハイ・テーブルと呼ばれる存在で、これは、犯罪組織の中でもより強力な上部組織で、言わばCrime Lordクライム・ロードとでも言えるボス中のボス達が構成する「上級役員会」のようなものである。カモラ、ラシアン・マフィア、チャイニーズ・マフィアなどのボスがこの会長会に入っていると言う。High Tableの名称は、恐らく、アーサー王伝説に登場する「円卓の騎士」にあやかってのものであろうが、「円卓」とは、13の席(13席目はいつも空席)がある「Round Table」のことである。本作の日本語版のHigh Tableの訳が「首長連合」となっているのは、筆者としては不満がある。内容的には関係がないのではあるが、仏教用語に「上座部:じょうざぶ」というのがあり、この「上座」が「High Table」に字義的に上手く適合するので、これを「上座会」としては、如何であろうか。
主人公John Wickはユーモアがない人間であるが、本作では気の利いた場面がある。Johnは、宿泊先であるコンティネンタル・ホテル・ローマ本店で、「仕事」をするために、武装用の銃器を取り揃えることにする。このホテル内の部署の専門員は。「ソムリエ」と呼ばれており、「オードブル」から「メイン」を経て、「デザート」に至るまで、それぞれの「料理」に合う「ワイン」、即ち、銃器をこの「ソムリエ」がサジェスチョンする場面は、中々「薬味」が効いていて、「美味しい」のである。因みに、このローマ本店のオーナー兼支配人役を演じているのが、Franco Neroで、往年の「マカロニ・ウエスタン」(蓋し、日本の映画興行師達が考え出した傑作の映画用語)のスターの一人であり、筆者は、この配役の妙に敬意を表するものである。
カモラの女ボス殺害の場面、カモラがイタリアの犯罪組織であることから、そのイタリアらしい、絵画が掛けられた室内空間での銃撃・乱闘戦、そして、鏡張りの部屋での決闘と、本作では、その美的センスが至るところに表象されており、観る者の目を楽しませてくれる。
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