本作では、アイルランドはダブリン出身の人気俳優Brendan Gleesonブレンダン・グリーソンが、神父役であるところからか、髭を蓄えて登場する。その実在感と共に、彼は、村人達のその心の悩みに癒しを与えようと努力するカトリック教会聖職者を説得力を以って好演している。とは言え、村人達の悩みは、次から次へと目まぐるしく描かれ、それもステレオタイプ的な描き方であるところから、何か底の浅さを感じさせる脚本である。
しかも、背景に映し出されるアイルランド島北西の自然風景は、確かに、印象的ではあるのではあるが、どこか、観光協会のキャンペーン映画を思わせるところもあって、どうもいただけない。海岸でのサーファーの場面、アイルランドの航空会社の航空機が止まっている地方空港の場面、民族舞踊のグループが踊っているパブの場面、主題のテーマに即してストーリーを展開をさせようとするのであれば、入れなくてもよいシーンではないか。
撮影場所は、アイルランドの北西にあるSligoスライゴ県で、先史時代の巨石文化遺跡で有名であり、また、映画にも再三登場する、大きな台形をしたBenbulbin山は、この県をシンボライズする標識になっている名勝である。そして、日本語版ポスターの背景になっている山はKnocknareaナクナレイ山といい、これまたこの県の名所の一つとなっている山であると言う。という訳で、残念ながら、いささか「胡散臭い」のである。
監督は、ロンドン生まれながら、アイルランド国籍を持つJohn Michael McDonagh ジョン=マイケル・マクドナーで、本作の脚本も書いている。アイルランドを舞台としたブラックユーモア的な人間劇を描いている点で、また、その名もMcDonaghといえば、どこかで聞いたことがあると思ってよく調べてみると、彼は、Martin McDonaghの兄であると言う。
マーティン・マクドナーは著名な劇作家であり、彼には、初期の映画作品としては、『ヒットマンズ・レクイエム』(2008年作)がある。この作品では、既に自分の初期短編映画(2004年作)で起用していたB.グリーソンを使って、ある殺し屋達の悲喜劇を描いていた。この意味では、本作のストーリーが与えるタッチが何か似ている。
更に、ジョン=マイケルの前作が、これまたアイルランドを舞台とした刑事もので、その主役を演じたのが、B.グリーソンであった。『ザ・ガード〜西部の相棒〜』という、2011年の作品である。しかも、この作品の製作総指揮の一人は、弟のマーティンという具合である。その意味でも、監督のジョン=マイケルと主役のB.グリーソンとは、よく知っている仲であると言えよう。
邦題の『ある神父の希望と絶望の7日間』とは野暮な題名であり、そもそも、主人公の神父に希望はあったのか。絶望しかないところから這い上がったのは、彼に希望があったからであろうか。そして、彼をして「処刑」の地に足を運ばせたのは、神への信仰心でもなったはずである。英語原題の『Calvary』とは、「髑髏の丘」、つまり、「ゴルゴタの丘」を意味する。しかも、その「処刑」が「神を祝祭する曜日」、つまり日曜日に行なわれたことも意味深と言えば、意味深であろう。