2024年7月28日日曜日

ターミネーター:新起動/ジェニシス(USA、2015年作)監督:アラン・テイラー

 『ターミネーター(1)』(1984年作)は、G.オーウェルの小説の表題『1984』からそのイメージだけは取ったのか、1984年と製作年と同じ年がストーリーの時間軸になっている作品で、A.シュヴァルツェネガー演じるT-800型はこの作品に登場する、連続女性殺人魔の悪玉である。

 元作より上出来という『ターミネーター2』(1991年作)ではT-800型は善玉となり、悪玉が液体合金で出来たT-1000となる。1997年の「最後の審判の日」を阻止するために、母親のサラとその息子のジョン・コナーが活躍する。

 『ターミネーター3』(2003年作)では、1997年に起こるはずの、マシーン側が人類殲滅のために引き起こすことになっていた核戦争は阻止されたかに思われたが、二十歳の青年になったジョン・コナーは、2004年、2032年のマシーン軍から送られてきた女性型ターミネーターT-X型にしつこく襲われながらも、T-800型の改良型T-850に守られ、かつ、後に妻となる女性獣医ケイトと知り合い、彼女と伴に「最後の審判の日」をアメリカ軍の地下壕で迎える。制作年の翌年に起こった核戦争は、やはり阻止できなかったのである。

 これをストーリー的に受けた『ターミネーター4』(2009年作)では、人類軍の指導者となったジョン・コナー(Chr.ベール)が、「最後の審判の日」から14年経った2018年になっても抵抗運動を続けていたが、自分の父となる、孤児少年のカイルをマシーン軍から奪回しようとする中、サイボーグである、元重犯罪者たるマーカス・ライトに助けれて生き延びるというストーリー展開となる。という具合に、ターミネーター・ワールドの存続にはここに至ってストーリー的には袋小路に入った感がある。

 こうして、「ターミネーター」のリブートの必要性が製作者側に強くあったのであろう。「ターミネーター5」とでも言える本作『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015年作)では、ジョン・コナーが生まれる前のストーリーが再度描かれ、しかも、ストーリー上、もう一本の時間軸が導入される。即ち、これまでの1984-1997-2004-2018-2029/2032という時間軸に対して、1984-1997-2017-2029という、言わば、カイルの視点から見た時間軸が本作では描かれる。そして、この時間軸上における1984年には善玉・悪玉両方のT-800型と、既にT-1000が存在し、2017年にはT-3000なるものが、驚くべき存在として送り込まれていたのである。事程さように、本作は、どんでん返しを含んだ、かなり手の込んだストーリー展開であるが、そこに何かご都合主義の「臭い」が感じられ、筆者にはしっくり行かないものが残る作品である。

 結局、本作では「新起動」とはならず、その次回作(2019年作)でも「再起動」は起こらなっかったのである。「ターミネーター・ワールド」、これで終わっては欲しくないのであるが、さて、「起死回生」はあるのであろうか。

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