第二次世界大戦末期の北東イタリアの山村に住んでいた、ある一家のこの話しは、まるでドキュメンタリー映画ように、イタリア・アルプスの美しい風景と静謐なピアノ音楽を背景にして淡々と描かれる。このドキュメンタリー性は、実は、本作の女性監督であるMaura Delperoマウラ・デルペーロが、自分の祖父と父親の生活を描こうとしたその個人的な動機によるところもあるが、監督自身がまずはドキュメンタリー畑で映画を撮ってきた経歴にもよるのである。実際に、デルペーロの祖父は教員であり、2019年に彼女の父親が亡くなった時に、家族の話しを聞いていた彼女は、自分の父と祖父の物語りが失われることを恐れて、本作を撮りたいと思ったということである。故に、共同プロデューサーも兼ねている彼女は、もちろん、本作の脚本を書いている。
本作の監督・Maura Delperoは、1975年にBolzano市に生まれた。ボルツァーノ市にあるカトリック系の高校を卒業した後、1994年からボローニャ大学でイタリア語を勉学し、パリのソルボンヌ大学での留学経験もある。ボローニャ大学卒業後は、この地の高校でイタリア語を教えていた。しかし、2000年代に入って、バングラデシュでドキュメンタリー映画の制作に関係していた友人をバングラデシュに同行することになり、その際、ドキュメンタリー映画制作にも関わることになる。これが彼女が映画界に関わる切っ掛けとなり、2004年にあるドキュメンタリー映画の助監督となる。自学でドキュメンタリー映画制作を学び、2005年にある中編のドキュメンタリー映画でデビューを飾る。2008年には長編ドキュメンタリー映画『Signori professoriシニョーリ・プロフェッソーリ』で第26回トリノ映画祭で初めての受賞をする。2010年から二年間、本格的に、ブエノス・アイレスのCentro de formación profesional SICA で演出と脚本制作の勉学をする。初めての長編劇映画制作のために書き上げたプロジェクト脚本は、ベルリン国際映画祭でも注目され、これが、2019年に『Maternal』という題名で制作され、70以上の映画祭で上映されるという反響を得る。本作は、この『Maternal』を受けての五年振りの発表作品となった。
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