2026年4月17日金曜日

ワイルド・スピードX3 Tokyo Drift(USA、2006年作)監督:ジャスティン・リー


 「カーきち」映画は観ないはずが、「Tokyo Drift」の副題でつい観てしまった。トウキョウが舞台であるが、日本人は殆んど登場しないという不思議な映画で、あんな派手なカーチェースを日本の警察が許すはずもなく、その撮影には、カルフォルニア州で、日本の道路の一画を模倣して撮り上げたとのこと。むべなるかな!あとは、ロケ隊が東京で撮影したシーンを上手くカットインして、トウキョウの雰囲気を出している。故に、編集には複数人が担当しており、その一人が、「ケリー・マツモト」という人である。

 さて、「Uwabaki」という日本語の言葉が本作で世界に広まったことは、喜ばしい限りである。一方、「Gaijin」という言葉もこれまた世界に広まったことは、残念な限りである。この言葉が明らかに「日本人村」から村八分にされた人間への排除の思想を雄弁に物語り、本作でのストーリー展開の中で、残念ながら、正しくも使われている。本作は、2006年の制作であるが、Gaijinという言葉ではなく、「外国人」という、一見、非日本人に対する排外性を覆い隠しながらも、本質的にはその排除性を容認している言い回しは、日本のマス・メディアではいつからなされるようになったのであろうか。こんな言語社会学的な問い掛けをするとは、映画を観る前に期待をしていなかっただけ、その分、嬉しく思う。そして、改めて、制作から20年経たのちの「日本人ファースト」の政治的な意味や、「日本国民」という言葉に含まれる、民族性や元々の出自を越えた包摂性に感銘を覚えたのである。

 とは言え、車を「ドリフト」させながらカーブを走行するテクニックは、どれだけのタイヤを消耗する走り方になるのであろうか。他人事ながら、少々そんな心配をしながら本作を観ていた筆者には、雌鶏(めんどり)をめぐっての、盛りのついた雄鶏(おんどり)二羽の脊髄反射的な闘争にはやはり辟易したのである。USAでも日本国でも同様な事情の顛末であり、USAではブロンディーヌをめぐって、我が邦国では黒髪のセニョリータをめぐっての爭いは、女性を自己の所有物と考えるマッチョ的発想の帰結であることには変わりがないであろう。二回とも奪う方だった主人公のSeanショーン君、奪われる時になった時、どんな反応ができるであろうか。

 そして、ショーン君の父親の存在である。USA海軍の将校である彼が、米軍基地内ではなく、東京のみすぼらしい一軒家に住んでいて、彼には日本人の愛人もいるのである。米国軍人が、日米地位協定で、恐らくは滞在許可証もなく、民家に住んでいる。果たして、そんなことは可能なのであろうかと不思議に思った次第であるが、脚本は、Chris Morganクリス・モーガンという、シカゴ生まれの脚本家である。脚本作りには、ある程度は日本のことも調べたことであろうが、どこまでが事実に基づいているのであろうか。何れにしても、本脚本家は、以降、このシリーズ『ワイルド・スピード』の脚本を何本も手掛けることになる。

  因みに、ショーン君の父親のUSA海軍での階級である。日本語のウィキペディアによると、「海軍大尉」と記されている。英語版によると、「Lieutenant」と書いてあり、不思議に思って調べてみると、勉強になった。「Lieutenant」という階級名は、陸軍と海軍では異なるのである。「Lieutenant」は、陸軍であれば、中尉か少尉であるが、海軍であると、「海軍大尉」となるのである。「陸軍大尉」は、Captainである。一方、同じ「Captain」でも、海軍であれば、「海軍大佐」となってしまう。ここら辺の、筆者の「混乱」を自分になりに整理すると、以下、こうなる。

 階級呼称に関しては、陸軍と海軍とでは、別の階級呼称の発展があり、更に、海軍に関して言えば、イギリス海軍の階級呼称の歴史的発展がまずあったということである。民間船舶か軍艦かを問わず、「船長」とは、「航海の長」であり、「Master」と呼ばれた。これに対して、それが大型軍艦であれば、軍事的専門家として「Captain」なる者が配置されて、国王の兵士を率いて軍艦に乗船した。16世紀半ばから17世紀のイギリス・エリザベス朝期には、イギリスはスペイン海軍に対抗して戦っており、その代表的な海戦が1588年のスペイン・アルマダ無敵艦隊に対する海戦であった。当時のイギリス海軍は、強力なスペイン艦隊に対抗するために、民間の私掠船を海軍に招集してその戦力を高めたが、私掠船を軍艦として機能させるために、軍事的助言を「船長」に与える人間が必要になる。これらの「船長」を補佐する人間を「Lieutenant」(英語発音で「レフテナント」で、アクセントは「テ」にある)と呼んだのである。こうして、「Lieutenant」は、将官級、佐官級、尉官級というように、次のより高いレベルの階級位とその下の階級位とをつなぐ階級の名称となる。

 このような「Lieutenant」の中の最先任「将校」が、「船長」すなわち「艦長」を補佐する軍事的指揮権を握る人間として、「Commander」という名称を得る。一方、「Lieutenant」は、現在で言う尉官級の将校の名称に次第に使われるようになり、Commanderと「Lieutenant」級の将校をつなぐ階級名が「Lieutenant Commander」(「Commanderの代理人」)と呼ばれるようになる。こうして、Captainが、大佐に、Commanderが、中佐に、そして、「Lieutenant Commander」が、少佐になり、「Lieutenant」は、尉官級の筆頭となることになり、「海軍大尉」に相当し、「海軍中尉・少尉」は、「Sub-Leuitenant」となるのである。

 一方、USA海軍も基本的にはイギリス海軍の階級呼称を踏襲した訳であるが、米海軍中尉では、「Lieutenant Junior Grade」という、「二等海尉」的な呼称を採用し、「海軍少尉」は、フランス語からの影響で、「Ensignエンスン」と呼ばれる。実は、「Leuitenant」の言葉自体がフランス語から来ており、「代理人」を意味する言葉であった。尚、「Leuitenant」は、米国英語では、「ルーテナント乃至はルテナント 」と発音する。

0 件のコメント:

コメントを投稿

ワイルド・スピードX3 Tokyo Drift(USA、2006年作)監督:ジャスティン・リー

 「カーきち」映画は観ないはずが、「Tokyo Drift」の副題でつい観てしまった。トウキョウが舞台であるが、日本人は殆んど登場しないという不思議な映画で、あんな派手なカーチェースを日本の警察が許すはずもなく、その撮影には、カルフォルニア州で、日本の道路の一画を模倣して撮り上げ...