1951年作の『めし』で、成瀬は、自らの監督としての特長の「方程式」、すなわち、女性を主人公にした現代劇を、原作は女性作家のものとし、その脚本を女性脚本家に書かせて撮るというやり方を確立した。その「女性映画監督」としての成瀬は、60年代に入ると、松山善三脚本による、大人の女をテーマとした作品を撮りだす。『娘・妻・母』(60年作、脚本:松山、井出俊郎)、『妻として女として』(61年作 脚本:松山、井出)、『女の座』(62年作 脚本:松山、井出)などである。
そんな中、60年に撮られた『秋立ちぬ』は、子供の視点から撮られた成瀬作品として異色である。成瀬自身がプロデュースしている作品としても、彼の思い入れの程が推察できよう。原案は、東宝の専属脚本家笠原良三のオリジナルシナリオ『都会の子』により、成瀬自身がこれを翻案したと言う。
信州の田舎から東京に出てきた小学六年生秀男が主人公である。母親は、夫に死なれ、生活に困って、秀男を連れて、東京で新しい生活を営もうと、東京にいる自分の親戚を頼って、出てきたのである。母親は、自分は旅館の仕事を見つけて、旅館に住み込みで働くようになり、息子を親戚の許に置いたままにする。こうして、母親が働く旅館の娘、小学校四年生の順子と秀男は仲良くなる。母親に捨てられる秀男の孤独と、また、母親役の乙羽信子が、母親の責任を捨てて、男にすがらざるを得ない女の「弱さ」が、観ている者の胸を詰まらせる。
2023年4月5日水曜日
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