M.マクドナーは、2004年に自身の脚本で撮った短編劇映画『Six Shooter』(2005年発表作)でデビューを飾り、早速、USAアカデミー賞でオスカーを獲得する。その三年後の2008年には自身の脚本を監督した『In Brugesブリュージュにて』(邦題は『ヒットマンズ・レクイエム』) で以って長編劇映画作品を世に問い、USAアカデミー賞の脚本賞にノミネートされ、英国アカデミー賞では、脚本賞を受賞するという成功を収める。
そして、2012年作の『セブン・サイコパス』を経て、本作は、M.マクドナーの劇映画三作目となるものである。脚本はもちろん本人であり、正に、M.マクドナーは映画作家である。音楽は、M.マクドナー組とも言えるUSA出身の音楽家Carter Burwell、撮影は、同じくM.マクドナー組の一人と言えるイギリス人キャメラマンBen Davisである。
USAと英国の合作映画である本作は、数多くの映画賞を獲得しているが、ヴェネツィア国際映画祭では、脚本賞を、英国アカデミー賞では八部門でノミネートされ、作品賞、最優秀英国映画賞、オリジナル脚本賞、主演女優賞(F.マクドーマンド)、助演男優賞(S.ロックウェル)を受賞している。一方、USAアカデミー賞では、六部門でノミネートされ、主演女優賞と助演男優賞を獲得している。助演男優賞には、W.ハレルソンもノミネートされていたが、こちらは獲得とまでには至らなかった。F.マクドーマンドについては、これが、ジョエル・コーエン監督作品『ファーゴ』(1996年作)に続く二度目のUSAアカデミー賞・主演女優賞の受賞であり、2021年には『ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督)で同賞を三度目に獲得することになる。
F.マクドーマンドは、実は、ジョエル・コーヘン監督の劇映画『ブラッド・シンプル』(1984年作)で映画界に主役でデビューしており、同年にJ.コーエンと結婚しているが、ウィキペディアによると、この『ブラッド・シンプル』にも、道路脇にある広告版が登場していると言う。であれば、脚本も書いた監督のM.マクドナーは、コーエン兄弟に本作でオマージュしているのではないかと思える。実際、コーエン兄弟映画のグロテスクから生まれる「可笑しみ」は、M.マクドナーの作品構成上の美意識に繋がるものである。しかし、この推理はどうも正しくないようで、M.マクドナーは、ある時USA国内を車で移動中、テキサス州を通るInterstate 10の道路脇に三枚の広告版を偶然に見たと言う。しかも、それは、本作同様に、ある町の警察を非難するものであった。道路脇の側溝に車ごと落ちて亡くなった娘の死を疑問視したある父親がこの広告を出したのであったが、実は、娘の元夫が妻の頸を絞めて殺し、殺害後に、事故を装ったものであったのであった。成程、「現実は小説より奇なり」と言うが、本作も、この三枚の広告版の広告から人間劇が展開する。ストーリーは実に上手く構成されており、本作が多くの脚本賞を獲得したのも頷けるものである。
尚、邦題は原題の一部をそのままにしたものであるが、とは言え、『スリー・ビルボード』はないであろう。「スリー」であるから、「ビルボード」は複数形でなければいけないはずである。原題も『Three Billboards Outside Ebbing, Missouri』と複数形である。であれば、やはり、邦題も『スリー・ビルボーズ』としてもらいたかったところである。
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