本作、事前に知識を持たないで、偶然に、観た。最初の30分では、ナマズを巨大に突然変異させ、それに手足と長い尻尾を生えさせたような怪物「グエムル」(韓国語としては「グェムル」、更には「ゲムル」と発音した方が言語に近いと言う)が少々ひょうきんであるのに対して、この怪物に反応する主人公達がドタバタ喜劇的に大げさに描かれていて、「何だこのパトスは!」という感じで、一時観るのを止めたくなったのが正直なところであった。それを乗り越えて、結局最後まで観たのであるが、途中の漢江の流れに沿うソウルの都市景観や橋梁の撮影に撮影監督キム・ヒョングの映像美意識を感じながらも、終盤、どうして、デモ隊が登場し、黄色の煙幕が噴霧されるのか分からず、本作を観終わった。
この冒頭の2000年から、六年経ち、映画のストーリー上の現在は2006年となる。つまり、この映画が公開された年でもある訳である。この現代性は、韓国の観客には「刺さるもの」があったのであろう。故に、当時としては記録的な観客動員数であったと言う。本作を単なる怪獣映画と思う日本人の観客には、韓国でのこの社会的背景を知らないままでは、怪獣の「ダサさ」だけが前面に出て、本作が日本では受けなかったのは、当然と言えば、当然である。
仮に、日本の米軍基地で、このような毒物が近くの川に廃棄されたとしよう。横田基地でも、岩口基地でもいい。日米地位協定により、日本の警察権は、欧州の米軍基地と異なり、基地には立ち入りできないのである。正に、1894年に日本が撤廃したはずの治外法権は、米軍基地に関しては、戦後の1951年以来、復活したまま、現在にも及んでいるのである。
つまり、本作は、軍事政権から民主主義を勝ち取った韓国人の立ち位置で以って、デモ隊も登場するストーリーが語られているのであり、ここら辺の背景を知らない、筆者を含めた日本人観衆には、監督ポンの意図が理解できなかったと言わなければならない。
ホルムアルデヒド(英: formaldehyde)とは、有機化合物の一種で、化学式ではCH₂Oと表記され、その水溶液は、「ホルマリン」として人口に膾炙している。毒性が強く、人体へは、濃度によって粘膜への刺激性を中心とした急性毒性があり、蒸気は呼吸器系、目、喉などの炎症を引き起こす。本物質は、WHOの下部機関たる「国際癌研究機関」により「グループ1」の化学物質に指定され、発癌性があると警告されているものである。とすれば、「グェムル」ようなモンスターが突然変異で出てくることも不思議ではない。
また、本作中に登場する「エージェント・イエロー」という化学兵器は、米軍がヴェトナム戦争で使用した枯葉剤「エージェント・オレンジ」に掛けたものであり、この枯葉剤も、その影響でヴェトナムで環境的要因による二次的奇形を持つ乳幼児が多数生まれた原因であると言われているものである。
更に、本作の公開と同時期、韓国・民主党系の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が推し進めていた在韓米軍から韓国軍への戦時作戦統制権の移譲問題を、本作のストーリー展開と関連付ける報道もあったと、ウィキペディアに書かれてある。
とすれば、本作は単なる怪獣映画ではない訳で、本作のストーリーは、家族的団結の大事さと共に、在韓米軍への、少なくとも皮肉を込めた政治的な気骨のある作品となるものである。改めて、映画鑑賞後に、色々調べてみることの大事さが分かった次第であった。
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