シリーズ第七作
時:関東大震災の年1923年前後
場所:東京下町
対立抗争:伝統的組と新興ヤクザ組織
高倉は渡世人であるが、元々は料亭の主人の息子で、池辺は、この料亭の板前である。
ヒロイン:高倉と相思相愛の仲の芸者:藤純子
「任侠」とは、自分の命も顧みずに、暴力を以ってしても他者を助けることである。その失われていこうとする「義侠心」への「白鳥の歌」が、東映やくざ映画の金字塔を飾る「昭和残侠伝シリーズ」である。「残侠」という、ノスタルギーのこもった言葉を味わいたい。その様式化された美は、時にうぶな男気の羞じらいを見せる高倉健と、苦みの効いた、男立ちの高貴を匂わせる池辺良の間の、殆どホモ・エローティッシュな感情の絡み合いによって伴奏される。任侠道が失われれば、そこには露骨な、仁義なき闘いしか残らないであろう。昭和残侠伝から実録やくざものへの転換もまた、時代の変化に対応したものであったのであり、それは、一つの必然であったとも言えるのである。
「ご一緒、願います。」と、風間は秀次郎に謂った。ちょうど小橋を渡りきったところで脇から風間に「重さん!」と声を掛けた秀次郎は、風間に近づいてさらに続けて言う:
「重さん、このケリは俺に付けさせておくんなせえ。堅気のおめえさんに行かせる訳に行かねえ。」これまでの撮影方向を逆にして、秀次郎の後姿が画面右、風間の斜め正面が画面左となり、風間は口を開ける:「秀次郎さん、あれから十五年...」
懐から短刀を取り出して、それを見つめながら、風間は続ける:
「見ておくんなせえ! 恩返しの花道なんですよ。」すると、封印をされた短刀のアップ。風間はその短刀の、握った右手の親指で、封を切る。その短刀と秀次郎の顔のアップ。短刀を見つめていた秀次郎、目だけを上に上げて無言で風間の方を見つめる。逆方向で風間の顔がアップになると、風間、固い意志を秀次郎に告げるように:
「ご一緒、願います。」ここで、テーマソングが再び鳴り出し、風間から目をそらした秀次郎、まずは無言で一人で歩き出す。画面の奥の方に数歩歩いた秀次郎、振り返って風間の方を見やると、風間の方もまた歩き出し、秀次郎に追いつき、追い越そうとする刹那、秀次郎が左手で風間の右肩に手を掛ける。こうして、風間は、秀次郎と並んで「恩返しの花道」を歩んで行くのであった。
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泣け!日本国民 最後の戦斗機(日本、1956年作)監督:野口 博志
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