2025年2月26日水曜日

昭和残侠伝-唐獅子仁義(日本、1969年作)監督:マキノ雅弘

シリーズ第五作

時:昭和初期
場所:東京から移動して名古屋経由で信濃の小諸
対立抗争:国有林の入札を巡る伝統的組と、これと対抗する悪徳ヤクザ組織
高倉は伝統的組の客人で、池辺は、対抗するヤクザ組織の客人である。お互いがお互いの組の親分を刺殺した因縁がある。
ヒロイン:高倉に好意を持つ女で、池辺の妻:藤純子


おるいのためにも、どうかこのあっしに死に花を咲かせてやっていただきます

 いつものテーマソングをBGMに森の中を行く秀次郎を左側からお供をするカメラは(1時間20分代)、秀次郎に近づいたり、離れたりする(二回)。それから、カットが少々早くなり、ショットがバストと、頭から膝までのアメリカン・ショットとを交互に繰り返す(四回)。すると、そこから更にカットのテンポを速めて、秀次郎の肩までのプロフィールが九回連続の「激写」となる。十回目からまたバストのショットに戻ると、秀次郎は森の小道を抜け出る。そこから、道を右に曲がる秀次郎の後ろ姿のショットになり、テーマソングの一番が終わる直前、秀次郎の後ろから、オフの「秀次郎さん!」と呼ぶ風間の声が聞こえる。ここまでで、1時間21分代ちょっとである。第五作の本作以降の、本シリーズの最後の九作目までの編集を担当したのは、田中修で、彼の、キャメラマンの坪井誠とのこの仕事は、蓋し、日本アカデミー・編集賞ものであろう。

 さて、本作のストーリーの目玉は、何と言っても、藤純子の役回りである。風間は、藤が演ずる、元柳橋芸者おるいの旦那で、ストーリーの始めに、風間は因縁あって秀次郎と対決し、左腕を切られてその腕が使えなくなってしまっていたという曰く付きである。それにまた、おるいは、やくざとのいざこざで左手に怪我をした秀次郎を偶然に手当てをして、それが縁で、秀次郎のことも悪くは思っていない。そのおるいと秀次郎の気持ちの関わり合いがなんとも色っぽい。とりわけ、おるいを演じる藤が、成熟した女の香を濃厚に匂わせ、しかもそれに不倫の感覚が混ぜ込む演技には、観ている40代以降の男性の誰もが「悩殺」されたと思われる。それでも、操を通して、愛する夫、風間の腕の中で死んだおるいの薄幸は、本作の男と男の世界に、男と女の色恋沙汰の、言わば、「白薔薇」の絵を添えるものである。

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