ある女優が気になった映画
最初に、はっきり言おう、筆者は混合フリースタイル格闘技に全く興味がないと。それでも、本作を最後まで観た。それは何故か。何故なら、本作最初の出だしが気に入ったからである。殆ど白黒の画面で、ストーリーはモノローグで始まる。この撮影のセンスで、おやっと思った。キャメラマンは、Michel Taburiaux ミシェール・タビュリオーというが、Wikipediaでは経歴が出ていない。ひょっとしたら、記憶に留めていいキャメラマンかもしれない。
すると、ストーリーは月並みの展開で、フランスの「裏街道」を描く作品である。筆者は、基本的には一度観始めたらまずは最後まで観るタイプなのだが、それでもやはり観るのはそろそろ止めようかなと思ったところで、ある登場人物が一人出てきた。フランスでは当時まだ非合法の混合フリースタイル格闘技を闇興行主に雇われてプロモートするための写真を撮る女性フォトグラーフである。彼女がその後のストーリーの展開のロコモティブになるし、ストーリーの「どんでん返し」の要にもなるのである。
この女性フォトグラーフの役をやっているのが、フランス人女優Caroline Proust カロリーヌ・プルーストである。別に美人という訳ではないが、何か知的さとパッションを内に秘めた複雑な雰囲気を漂わせて魅力的である。彼女が主人公に絡むのである。大体は舞台女優とテレビ映画女優として活躍しているようだが、本作の前の2005年に撮ったテレビ映画シリーズ『Engrenages 』(ギア装置 ― 司法の歯車に巻き込まれて)で女性刑事を演じ、フランスで有名になった女優であるようである。2020年に同じ役で第8シーズンでも登場している。
という訳で、本来なら観なくてもいいような作品を意外にも最後まで観てしまう切っ掛けとはどこかに落ちているということであろうか。いつか無料で観るチャンスがあったら、自分の映画鑑賞力を高める、或いは「試す」意味で、ご覧になってはいかがであろうか。
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