学園もの漫画の劇場版。
「ああ、あの時、ああしておけば、よかった!」とか、「自分の人生をもう一度別に生きて見たかった。」とかの願望が湧き起こることは、人にはあるものである。そして、この願望を青春時代に当てはめてみると、それは、高校生時代、とりわけ、それも人生の分岐点となる、高校三年生時代に該当するであろう。分別がより付き、多感な17歳、或いは18歳の時に、人は、就職か、専門学校進学か、或いは大学進学かの選択を迫られ、そして高校卒業の3月に自分の将来が現実のものとして決まっていく。この、「高校三年生を再度生きてみたい、つまりリ・ライフしてみたい!」という願望を叶えてくれるのが、10年の若返りを可能にする一錠のカプセルであり、こうして本作のストーリーは展開していく。
そして、青春映画に典型的な「青春は一度しかない」という月並みなスローガンがストーリー展開の動機になっているという点で、本作は、平凡なメッセージの繰り返しであるには違いないのであるが、それに、他者との関わり合いというヴェクトルを絡めるところに本作の特異性がある。
他者へ関わっていくことを「なんか、オジサン的」と自分で皮肉りながら、それでも他者へと関わっていく男性主人公は、それが「リライフ」であるからこそ、一度青春を味わった者の自意識、或いは悔悟で「同級生」に関わっていく。
「困った人を放っておけない、面倒見のよさ、気遣い」を見せる男性主人公は、「対人スキルの高さ」を持つ、そして、その対人スキルの高さが、「どうしようもなく、『暑苦しい』、熱くてお節介で、真っ直ぐ」な人間と評価される。
共助よりも自助が優先される現代日本においては、いわゆる新自由主義が跋扈し、既に1960年代に問題化されていた「個人のアトム化」が社会の隅々まで進行している。この意味で、たかが漫画の映画化という目線ではなく、現在の日本社会の在り方を見直してみるというつもりで、本作を「楽しく」ご覧になってはいかがであろうか。
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