中年女性を「おばちゃん」と呼ぶのは止めよう!
本作、音楽センスがいい!エンディングには、わざとだろうが、ポップス系を使っているが、映画内でモーツァルトを使った妙は、時々はっとする自然の美しさと相まって(撮影:芹澤明子)、中々いける。音楽的フモールを持ったハイドンであれば、もっとよかったかもしれないが、本作、全体として静かにユーモアを発揮する佳作としてお勧めしたい。
ストーリー的には想定内で正に平凡なのであるが、山の中で道に迷うという非日常的な状況で人間の中身が少しずつ引き出されてくるところに本作のドラマ的眼目があり、そこに人間がなまに見えてくる。この沖田監督の意図に合うのは、やはり、わざと無名の、或いは半分素人の俳優を使うことである。そして、それによって、観ている方に俳優が如何にも演技をやっているという感じがその分少なくなるという得点も出てくる。観衆は予感なく役を演じている俳優に対等に向き合う。とりわけ、「師匠」役をやった徳能敬子がいい。年齢が一番上のせいもあって、迷ってすぐにグループのリーダー格になるのであるが、彼女には何か戦前の上流階級のお嬢様だったような感じが未だに出ていて微笑ましい。キャスティングの勝利であろう。こうやって、七人の「小人」ならぬ、レイディースたちは、我々を一時メルヘンの世界へと導いてくれるのである。
最後に提案:
映画宣伝自体、また、レヴューでも登場人物の彼女たち七人を「おばちゃんたち」と呼んでいるが、女性をそう呼んでしまうことで、25歳になったらもう年を取らないという日本人女性に、精神的な若さを保とうとする意欲を失わせることにならないだろうか。恐らく長年の主婦稼業で日常のマンネリズムの中に埋没していた「ジュンジュン」が、サバイバルの中で蛇を取ったりする果敢ぶりを発揮し、眼が生き生きとしてきて「美しく」見えてくるのは、筆者にだけであろうか。女性が生き生きとして美しく、男たちが「ダンディー」である、そういう美しい国に日本がなって欲しい。
2022年8月6日土曜日
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