第二次世界大戦中のノルウェーでのレジスタンス活動も描かれている英国・アメリカ合作映画
この映画にはノルウェーの対独レジスタンスが出てくる。1944年、ノルウェー人のベルグマン少尉(G.チャキリス)は、ノルウェーの、ある地下組織のリーダーとしてイギリス軍に自分の組織が掴んだ重要な情報を運んできた。ナチス・ドイツ占領軍がフィヨルドの地の利を生かしてV2号ロケット燃料製造所を設けているというのである。
イギリス空軍はこの情報を受けて、高速軽爆撃機De Havilland 98.モスキートからなる英国空軍爆撃中隊633にその燃料製造所の爆撃を命じる。モスキート型爆撃機は、高度10.000メートルで時速630kmを出せる高速の双発軽爆撃機で、高度25メートルの低空から目標を精密に爆撃することが出来る。フィヨルドのような狭い地域に低空で侵入して、精密に爆撃ができるのはこのモスキート型爆撃機しかないからである。こうして、隊長Grant(クリフ・ロバートソン)の下、633中隊の爆撃訓練は始まる...
この、スコットランドで撮影された戦争映画は、飛行シーンでは、7機のDH.98モスキートを使用して撮影が行なわれた。7機中4機のみが飛行可能であり、残り3機が地上走行のみが可能であったと言う。他の飛行シーンは、戦時中の実写撮影を流用している。終盤の敵基地攻撃の撮影場面では、その当時(1964年作)の特撮技術としては上質で、モデル(1:48サイズ比)を使用していることの違和感が余りないくらいで、安っぽいCGよりは余程いいのではある。ただ、残念ながら、戦争の中での人間の、生と死を賭けたドラマがよく描けていない。そのような難点はあるものの、この作品は、戦時中の、あるエピソードを語るものとして、一見の価値はあると思う。
同じモスキート爆撃機が活躍する英国映画に、テレビ映画『0011ナポレオン・ソロ』のロシア人・Illya Kuryakinイリヤ・クリヤキン役で有名になったデヴィッド・マッカラムが主演した、1969年作の「Mosquito Squadron」という作品がある。こちらは、北フランスにあるVロケット発射場の爆撃作戦である。
さて、私事の、しかも古い話で恐縮だが、これは1980年代半ばに筆者がバイクで約6週間ドイツ・スカンディナヴィアを旅行した時の話である。
それは、ドイツを南北に縦断し、デンマークへ、そこから、スウェーデンに出て、更にノルウェーへ。ノルウェーは首都のオスロから、ベルゲンへ斜めに北上し、そこからフィヨルドの細かい襞を舐めるようにして南下し、そこの南端から少し東寄りの町からフェリーで北海を渡って、又、デンマークのユトランド半島に戻ろうとしていた時のことである。そのフェリーの出る町をKristiansandといい、フェリーは夜の十時頃の出発の予定であった。物価が高いスカンディナヴィアのこと、レストランなどに入る金もなく、サンドイッチを買って町のベンチにでも座って簡単に夕食を済まそうとしていた。それは、余り人気のない広場のベンチであった。
座ってそのサンドイッチを食べていると、どこからともなく、60歳は過ぎているだろうか、一人の男が現れて筆者の座っているベンチに腰をかけた。内心は何だろうかと色々と思いをめぐらせていたのであったが、その男は、「どこから来たのですか。」と、英語で話しかけてきた。で、英語嫌いの筆者は、その時もついドイツ語で、「日本人です。」と答えてしまった。すると、その男は、こう質問を続けた。「何故ドイツ語を話すのか。」と。「今ドイツを旅行してきたので。」と応えるのに対して、その男は堰を切ったかのように、話し出した。後から思い出してみるに、少し悲しそうな顔をしながら。
彼の話をかいつまんで話すと、こうである。それは第二次世界大戦中のこと、ノールウェーがナチス・ドイツに1940年に占領されると、ノルウェーにもレジスタンスが組織され、自分も17歳でこの抵抗運動に参加したが、ドイツ軍側に捕えられて収容所送りとなって、そこで終戦を迎えたとのことであった。
フェリーの船上にありながら、筆者はその夜、色々な思いに囚われていたが、それまで遠かったヨーロッパでの第二次世界大戦が、これ程身近に感じられたことはそれまでなかった。あの、Kristiansandのノルウェー人は、収容所でどうやって生き延びたのか、戦後はどうやって人生を過ごしたのか、筆者は、ある種の興奮を胸に抱きながら、あれこれと想像したものであった...
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